あなたの職業は?

再度お仕事ネタ。

私は3歳年上の上司と二人で
音楽・英語教室の運営の仕事をしている。

受付スタッフが12名。

14名で教室を切り盛りする。

私と上司は、新しい開講クラス決め、講師の稼働決め、
体験教室の進行役、楽器販売、研修、イベント開催
教室に寄せられるクレーム処理。

1600名の生徒さんと70名の講師が
気持ちよくレッスンできるように動く
「なんでも屋」である。

開講前の入会生との面談も仕事のひとつ。

10日間にわたって、上司と半分ずつ受け持ち
朝から晩までオリエンテーションをする。


この春のこと。

いつものように上司と二人で
交互に面談していた。

そこにある親子が私のところに座った。

「この親、覚えてる!」

体験教室のときから、その生徒の父親は目立っていた。

なぜなら、スウェット上下を着て、
最後まで笑い一つ浮かべなかったのだ。

ラフな親が多くなったとはいえ、
スウェットで来る親はそうはいない。

この時も父親の服装はスウェットだった。
斜に構えて座り、腕を組んで私の話を聞き始めた。

母親もこれまたたまげた。
用意された机に頬杖をつき始めた。

「なんだ!この親は!」少しむっとした。

それでも私は笑顔で
入会したコースからどのように先に進んでいくのかを
丁寧に話し続けた。

今度入会するコースについては
体験教室のときに、講師から説明があるので、
面談のときは私たちから話すことはない。


腕組みしながら、私の話を聞いていた父親が
そのうち、机をトントン叩き始めた。

「?」意味がわからない。

さらに話を進めて行くと、
その叩く音がだんだん大きくなった。

仕舞いにはこぶしでドンドン叩いた後
父親はこう言った。

「さっきから聞いてりゃ、この先のコースの説明ばかり
じゃないか!今 入ったばかりなのに、
先のことを言うなんて営業の何ものでもないだろう!」


私はその言い方に唖然とした。


びっくりした上司が席を立ち、
机の横で膝をつき、
「何か〇〇が失礼なことを言いましたか?」と
小声で母親に話し掛けているのが聞こえた。

そして心配そうにこちらを見ている。

受付スタッフもドアの外から、
何事かわからず、こちらを覗いている。

母親が頬杖をやめて言った。
「いいえ、いつもこうなんで大丈夫です。」だと!


俄然ファイトが湧く。

絶対この父親を納得させて帰して見せる。

(体験教室で入会コースの説明はしたでしょうが!
あなたはいったい何を聞いていたのよ。)

この言葉はぐっと飲み込んだ。

「そうですか・・この先、どのように進んでいくのか
心配されるご父兄が多いので
説明をさせていただきました。
一度入会された以上、長く続けていただきたいと
私たちは心から願っております。

最後になりましたが、お子様が入会されたコースでは・・」

私は今まで以上ににこやかに
ゆっくりと丁寧過ぎるくらいに
入会コースの説明をした。


「どうでしょうか、ご納得して頂けましたでしょうか?」

私が問いかけると、父親は何も言葉を発せず
それでも顔を縦に動かしてうなづいた。

見送ったあと、上司が駆け寄ってきて
「なにあれ!?何の職業かしら?
まるで〇〇ザみたいね」とため息をついた。

バックヤードに戻ると
スタッフたちが「すごい父兄でしたねー」と
口々に言っていたが、そこに

「わかった、わかった!あの父親の職業!」と言って
スタッフの一人が一枚の入会届を持って
バックヤードに入ってきた。

あの父親の職業・・どれどれ?


なんとまぁ、父親は「刑事」だったのだ!

しかも凶悪犯を扱う捜査〇課の刑事(^_^;)

「〇〇さんが取り調べを受けたわけですねー」
「〇〇と〇〇ザは紙一重って言うけど本当ですねー」
スタッフたちが騒いでいる。


「今度来たら、電球スタンド持っていってあげようかしら。」
上司までこんなジョークを飛ばした。


刑事ねぇ。。民を守るはずの人がなぁ。
張り込みしてもこれじゃ、目立つんじゃないかなぁ。
あの父親、職場では上司にガンガンやられているのかも?
それで、他ではあんなふうになっちゃう?
まさかねぇ・・


仕事だと思えば、無理して笑うことも謝ることも平気だ。
あの父親を不憫に思うことさえ出来る。
しかしまぁ、面白い経験をさせてもらったものだ。

次の日、大きなイベントがあったのだが
なんとそこにあの親子が見にやってきた。

私が司会をしていると気づいた父親は
そそくさとその場を去って、
それ以来、一度も教室にはやって来ない。

なあんだ、来てくれれば
「こんにちは~!」明るく笑ってお出迎えするのに~
いつもそう思いながら、土曜日出勤している私なのである。
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by gogoiknosa | 2010-09-27 01:18 | Yayoi